介添日記

心に刻まれたお葬式

今回お見送りしたのは
まだ還暦を迎えたばかりの女性。
もう10年以上
難病と闘ってきた彼女。
5年前に生まれた初孫である孫娘とも
充分な時間は取れなかったし
生まれたばかりの2番目の孫は
その腕に抱く事さえ叶わなかったんだ。


孫娘の記憶の中のおばあちゃんは
いつもベッドに横たわり
穏やかに笑っている姿だけ。


オシャレをして出掛ける姿も
お化粧をした顔さえも
孫娘さんは知らない。


だから。
皮肉なことに
孫娘がおばあちゃんのお化粧をした顔を
写真以外で初めて見たのは
冷たくなってしまったおばあちゃんだったの。


私が施した
死化粧をまとうおばあちゃんに
「おばあちゃん☺️キレイねー」と
連呼していた5歳の孫娘さん。


その姿に
ふと思いついた私。


式が始まる直前。
最後の化粧直しと称して
娘さんとこの孫娘さんでお櫃を囲み
紅を実の娘さんにさしてもらい
そして、、、
おしろいを筆になじませ
この孫娘さんに握らせたの。


「おばあちゃんに
 最後のお化粧をしてくれるかな?」


そう言った私をまっすぐに見つめ
ゆっくりと首を縦に振った孫娘さん。
恐る恐る、でも、優しく愛情を込めるように
おばあちゃんのお顔に
おしろいを乗せた孫娘さん。


その姿はまだ5歳の幼児ではなく
1人の小さなレディだった。
真剣に。でも慈しむように。
筆を動かしていたんだ。


「おばあちゃん。キレイ。
 私がおばあちゃんをキレイにしてあげたの。
 おばあちゃん喜んでるかなあ?」


嬉々としてそう言っていた姿に
この孫娘さんの母である
故人の娘さんがこう言って下さったんだ。


「この子は今日のことを
 きっと一生忘れないと思います。
 おばあちゃんのお葬式を
 この子の宝物にしてくださって
 本当にありがとうございました」


何だかすっごくあたたかい気持ちになった。


感謝されたからでもない。
いい事した気分に浮かれた訳でもない。
ただまっすぐに
この孫娘さんにとって
おばあちゃんのお見送りが
悲しいだけじゃない
あたたかい思い出になってくれるだろうことが
私の心をもほっこりさせてくれたのだと思う。


一つ一つのお見送りを大切に。
その故人さまや
取り囲む方々に寄り添うお見送りを。

願わくば
悲しいだけじゃない
何かを最期にしてあげたという満足感を
故人を取り囲む方々に持ってもらえる
そんなお見送りを。

それが私の目指す
【心に刻まれるお葬式】